水曜日, 1月 19, 2005

あるロケット技術者の回想

超クルマはかくして作られる あとがきより

「私 がそのことにようやく気がついたのはいよいよ 打ち上げの瞬間がやってきたその時だった.メインエンジンが始動しロケットが火を吹き,白い巨体が発射台からゆっくり上昇し始めると,6マイルも離れたと ころに立っていた我々のところに突然の雷鳴のような凄まじい爆発音が轟いた.空気がばりばりと音を立ててはじけ,地面が振動し,熱い空気が炎のように顔を なぶった.そしてわたしは震えだしたのだ.それは予期していたような歓喜ではなかった.恐怖だ.今にも私が設計したバルブが壊れ,エンジンが爆発するので はないかと思った.7年間熟考に熟考を重ね,年百回ものテストを繰り返して何もかも万全であると確信していたすべてが,まったく不十分だったことに突然気 づいたのである.奥歯がガチガチ鳴った.ロケットが音速を突破したときに発する恐ろしい衝撃波を聞きながら,私はもはやどうすることもできないのだ. ジョーの奴も真っ青だった.両手を握りしめ空を見上げ歯を食いしばっていた.私たちは子猫のように半べそをかきながら,ただ彼らの旅の無事を祈るしかな かった.私が技術者として本当に一人前になったのはあの瞬間だったと思う」

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